2010年1月27日
僕が歯医者になった理由1
master (2010年1月27日 19:54)父の闘病生活
「お父さん、早く元気になって家に帰ってきてな。」
「うん。お父さんすぐに良くなるよ。そうしたら、お母さんと一緒に家へ帰るから。それまで待っといてね。」
病室のベッドの上で寝ている父に代わって、母がそう答えました。両親に別れを告げ、夕暮れの病院からの帰り道を兄弟で歩いていました。「英敏、お前お母さん帰って来えヘんのさびしいか?」兄からの問いかけに僕は何も答えず、歩いていました。もし何か答えるとさみしさが一気に襲ってくるのではないかと思っていました。
実家の商売がうまくいかずお金がなくなり、僕が公立の小学校に転校したころ、父は病気で入退院を繰り返していました。そのころの思い出としては、病院に父のお見舞いに行き、付き添いで家に帰ってこない母に会う毎日でした。
病院
病室の壁と床はグレー色で寒々しく、昼間なのに横のビルのせいで日が射さず、ついているはずの廊下の蛍光灯も薄暗い。ところどころ塗料がはげて錆が見えるパイプベット。シーツだけがやけに真っ白でのりが効いていてぱりぱりの感触でした。
お見舞いに行くと、父の好きなアサリの味噌汁をガスコンロであたためなおすのが僕の仕事でした。看護婦さんの詰め所の窓口で10円払うとガスのコインがもらえます。それをコンロの横の機械に入れると数分間だけ火がつきます。
(つづく)
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